胡同愛歌
原題:看車人的七月
監督:安戦軍(アン・ザンジュン)
2003年/中国
私が借りてくるDVDは、中国映画が多い。
言葉の勉強になるし・・と自分に言い訳をしながら、いつもDVDショップで中国映画コーナーの前に立つ。
言葉の面だけではない。中国の映画の背景には、中国ならではの風土や文化が感じられる。そして、なんだか影がある。
単なる娯楽映画ではない、深さをもつ映画。私はこうした中国映画の底知れぬ暗さに魅せられているのかもしれない。
『胡同愛歌』(フートンあいか)は、北京の胡同(古くて細い路地)に住む父子が主人公だ。
父親の杜は最近仕事を見つけ、また宋という女性との再婚が決まり、ささやかな幸福のなかにいる。
杜と前妻との間の息子・小宇は15歳。学校の成績は思わしくないが、思いやりのあるいい子だ。
そこへ、服役中だった宋の夫が戻り、以前約束していた宋との離婚を取り消したところから悲劇が始まる……。
北京の片隅で必死に生きる人々の喜びと悲しみ、希望と絶望、そして思いやりと愛情、憎しみが、とても理解しやすく伝わってくる映画だった。この後物語がどうなっていくのか、ハラハラしてちっとも飽きる事がない。俳優の演技もとてもよかったと思う。
小宇が仏頂面でひょろ長い青年であるのも、丸っこく愛嬌のある顔の父親も、とても親子には見えないのだが、なんだか妙にリアルだった。
ところで原題に「胡同」の文字がないように、この映画は必ずしも胡同に重点を置いたものではないようだ。胡同は、ごく当たり前に映画の背景に存在している。
だからこの映画を見てあまり胡同を意識することにはならないと思うけれど、きらびやかな北京の街と交互に映し出される胡同には、やはり懐かしさとともに安らぎが感じられた。
北京オリンピックを境に取り壊され、激減したという胡同。いつか住んでみたいと思っていたが、今どれぐらい残っているのだろう。
来月中国に行くから、時間があったら昔の面影を求めて胡同を歩いてこようかな。
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by sawakon29
| 2011-10-18 01:00
| 中国